「着いた着いた。伯爵の所に向かう前に、まずは酒場で何かあったかい物を頂こうぜ」
「そうだな。体も冷え切ってることだし」
「それはともかく、伯爵の住んでる場所とかも聞かなくちゃいけないしね」
オーディンに着いた一向はジュンの提案により、まずは酒場へと向かった。
「シオリ、着いたわよ」
カオリは酒場のカウンターへ腰掛ける前に、まずシオリを背中からゆっくりと椅子の上に降ろした。
「えっ!あれっ…お姉ちゃん?私今まで…」
「術を使った関係で、力尽きて眠ってたんだよ。それにしても、シオリの寝顔なかなか可愛かったぜ」
「えっ、やだっ…ユウイチさん、そんなこと言わないで下さいよ…」
自分の知らぬ間に寝顔を見られた事にシオリは恥ずかしさを覚え、顔をかあっと赤くした。
「さて、シオリも起きた事だし、俺はコーヒーでも頂くとするか!」
「私コーヒーはちょっと…」
コーヒーを注文しようとするユウイチを前に、シオリは苦手そうな顔をした。
「そういやシオリは苦いのも駄目だったな。しかし、辛いのも駄目で苦いのも駄目となると、まるっきりお子ちゃまの舌だな〜」
「う〜、そんなこというユウイチさん、嫌いです〜」
赤くした顔を今度はむすっとさせ、シオリはユウイチと反対の方を向いた。
「あれっ…あの人…?」
「どうかしたの、シオリ?」
「ううん、ちょっと気になった事があって。ちょっと席を外すね」
2、3席隔てた所に座っている見慣れない格好をした少年。シオリはその少年に不思議と惹かれるものを感じ、少年の側に近寄った。
「こんばんは。見慣れない格好ですが、何処か遠くからおいでになったのですか?」
「えっ?それは僕に向かって聞いてるのですか?」
亜麻色の頭髪にダーク・ブラウンの瞳の少年は、自分が声を掛けられたのが以外であるかの反応を見せ、シオリの方を向いた。
「ええ。こんな所で一人ぼっちで何をしているのかと思いまして」
「旅の途中この街に寄ったのはいいのですが、あまりに寒くって…。それで体を温める為に、こうして酒場で温かい物を飲みながらくつろいでいるのですよ」
他に付き人がいないのだから一人旅なのだろう。自分と同じ位の年の男の子なのに、何て立派なんだろう。自分が常々姉と共に行動している姿を投影させ、シオリはそんな羨望の念で少年を見つめた。
「マスター、コーヒーをブラックで一杯」
「私はミルク入りで」
「サユリには紅茶にミルクを入れてお願い致します」
シオリが少年と会話していた頃、サユリ達は各々の飲み物を注文していた。
「じゃあ俺は紅茶にブランデーを入れて…」
「ボカッ!」
ブランデー入りの紅茶を注文しようとしたジュンを、カオリは有無を言わずに殴り付けた。
「痛っ…カオリ、いきなり殴るなよな〜」
「まったく、これから人に会いに行くっていうのに失敬よ」
「会いに行くのは人じゃなくてヴァンパイヤだろ?」
「もう一発食らいたい?」
「冗談です…。じゃあ俺もコーヒーをブラックで。ハァ…」
カオリに気圧され、ジュンは渋々ブラックコーヒーを注文した。
「ジュンさん、相変わらずお姉ちゃんのお尻に敷かれてるなあ…」
「ふふっ」
「どうかしたのですか?」
生真面目そうな顔の少年が突然微笑み出した事に、シオリは親近感を感じると共に、何故微笑んだのか訊ねた。
「いえ、貴方のお姉さんとお連れの青年のやりとりを見て、昔を思い出していたのですよ。僕も旅に出る前、育ての親が仕事中でもブランデー入りの紅茶を飲もうとした時、よく咎めてたなぁって…」
何故育ての親なのか。シオリは訊ねなかった。人には人なりの事情があるのだし、何より昔の思い出を語っている少年の楽しそうな喋り方を見ると、育ての親との思い出が楽しいものであると容易に想像出来たからだ。
「シオリ、貴方は何にするの?」
「あっ、お姉ちゃん!今行く〜」
2、3席隔てた先から自分に注文を訪ねる姉の声を聞き、姉の方を見てシオリは答えた。
「シオリさんって言うんですね」
「ええ。そういう貴方は?」
再び少年の方を見て、シオリは少年の名を訊ねた。
「僕はユリアン、ユリアン=ミンツです」
「ユリアンさんですか」
「ユリアンでいいですよ。見た感じ年も同じ位ですし」
「それもそうですね。じゃあ私の事もシオリって呼んで下さい」
「ええ、分かりました」
「シオリ!」
「今行きま〜す!じゃあ私はこれで。機会がありましたならばまた何処かでお会いましょう」
「ええ。また何処かでお会いになれるのを楽しみにしています」
ぺこりとお辞儀をして、シオリは姉の元に向かった。
何もかも不思議な少年だと思った。それは外見だけじゃなくて、喋り方や応対の仕方まで不思議さを感じた。何より互いに敬語調で喋っているのに、惹かれるような親近感を感じた。そしてその内面的な部分は、自分とそっくりなように思えた。
(何だろう…、まるで運命の出会いのような……。ユリアン、貴方とは必ずまた何処かで会いそうな気がする……)
|
SaGa−4「夜の闇は深まり…」
サユリ達がオーディンに着いた頃、ラインハルトは本陣に重臣達を集めた状態で、ブラウンシュヴァイクの洞察を伺っていた。
「陛下!偵察の兵の報告によりますと、ブラウンシュヴァイクは兵を引き連れ新無憂宮の方へ撤退したそうです」
「そうか、流石のブラウンシュヴァイクも玉砕覚悟の決戦をやる程愚かではなかったようだな。ご苦労だった、下がって良い」
労いの言葉を掛け、ラインハルトは報告しに来た兵を下がらせた。
「さて、小心者のブラウンシュヴァイクは余の予想通り兵を引いた。だが、これで反乱が終結した訳ではない。今すぐブラウンシュヴァイクを追撃し、その野望を完全に断つ!」
「オーッ!!」
意気盛んな声を上げ、重臣達は出撃の準備に掛かる為本陣を後にした。
「さてと、これで俺の任務もようやく終わるな…」
「ああ、卿には色々と世話になったな」
「申し上げます!只今ミュラー将軍が宿営地前に駆け付け、至急陛下にお取り次ぎたいとの事でした。
「何!?ミュラーが…。分かった通せ」
ユキトと会話をしていたラインハルトの元に、ハイネセンに赴いたミュラーが宿営地に駆け付けたとの報が入り、ラインハルトはミュラーを通すように指示した。
「陛下!キルヒアイス殿は陛下のご意向に従い、無事ローエングラムの地に着きました。私はその旨を陛下に伝えるようキルヒアイス殿から頼まれ、こうして駆け付けて参りました」
「そうか、キルヒアイスが戻って来てくれたか!…報告ご苦労だった、ミュラー。キルヒアイスが到着したからには、事態は早ければ余が到着する前に解決するであろう。ミュラー、引き続きブラウンシュヴァイク討伐の戦列に加わる命を与える!」
「はっ!」
一礼し、ミュラーは本陣を後にした。
「そのキルヒアイスという男、よっぽどの男のようだな。いや、それ以前にアンタにとって特別な存在のようだな」
ユキトはキルヒアイス到着の報を聞いた瞬間、ラインハルトの顔が一瞬純粋な少年のように明るくなったのを見逃さなかった。
「ああ。キルヒアイスは俺にとって掛け替えのない親友だ」
そう言い終えると、ラインハルトも出撃の準備の為、本陣を後にし、ユキトもそれに続いた。
(あれからたった三ヶ月しか経っていないというのに、もう何年も会ってない感じがするな…)
輝く星々に目をやり、ラインハルトは感傷に浸った。キルヒアイスと初めて邂逅した時の事を思い浮かべながら…。
キルヒアイスの親はローエングラム出身の身でありながら、ハイネセンの名族、マリーンドルフ家に仕える一兵士だった。有能な人間であり、ローエングラム出身の事から先代ローエングラム侯が戦の度にローエングラムの地に呼び寄せていた。その時キルヒアイスも一緒にローエングラムの地に赴き、親を通して二人の関係は深まって行った。宮殿内に同年代の子供がいなかったラインハルトにとって、キルヒアイスはその頃から友達同然の人間だった。
(そして、七年前だったな、お前がこのローエングラムの地に亡命して来たのは…)
今から七年前トリューニヒトという野心家の陰謀により、マリーンドルフ家の主、フランツが暗殺された。それによりマリーンドルフ家は没落し、マリーンドルフ家に仕えていた多くの者達はトリューニヒトによって処刑された。キルヒアイスの父もその例外ではなかった。だが、キルヒアイスの父は済んでの所で、自分の息子を親交のある先代ローエングラム侯の所に亡命させるのに成功した。それからキルヒアイスは先代ローエングラム侯の命でラインハルト直属の部下となり、今に至るラインハルトとキルヒアイスの関係は構築された。
(本当にお前は俺の為に尽くしてくれたな…。そう、あの時も……)
首に掲げたペンダントを開き見つめながら、ラインハルトは3ヶ月前二人の間に起こった悲劇を回想した。
3ヶ月前、先代ローエングラム侯が急死し、ラインハルトがその地位を継ぐ事となった。その時、ラインハルトの地位継承を快く思わぬ者は多かった。そして就任記念行進の時、悲劇は起きた。ラインハルトの就任を民衆が熱狂的に向かえる中、ラインハルトを心良く思わぬ者の刃がラインハルトに向けられた。その時キルヒアイスが身を呈してラインハルトを守り、犯人も無事捉えられた。だがその刃は身を呈したキルヒアイスの右腕の筋に深く刺さり、それによりキルヒアイスの利き腕たる右腕は致命傷を受けた。その右腕は一般生活は辛うじて出来るものの、武器を手に持ち戦う能力は永遠に奪われてしまった。
(そしてお前はもう俺の役に立てないといい、嘗ての主であるフランツの忘れ形見の所に行ったのだったな……)
腕なんか関係ない、お前が側にいてくれるだけで充分なんだ。だから何の心配もなく、何の気を使うこともなく、俺の元に戻って来い!輝く星々に目をやり、ラインハルトはそう強く願った。
|
「ここがオーベルシュタイン伯爵の居城か…」
オーディンの北の丘に位置する不気味な雰囲気のオーベルシュタインの居城を前に、一向は不安を抱かずには入られなかった。
「何か出そうで怖いです…」
「あははーっ、伯爵はお兄様の知人ですし大丈夫だと思いますよ〜、多分…」
怖がるシオリをなだめようとするサユリも、少なからず不安や恐怖感に値するものを感じていた。
「ま、何にせよ俺達男共は血を吸われる心配はないから安心だ。な、ユウイチ」
「そうだな。しかし女性陣はどうだか…。特にシオリなんか可愛いから真っ先に吸われるかも…」
「ユ、ユウイチさん…そんな嬉しいんだか怖いんだか分からない台詞は止めて下さい…」
可愛いと言われるのは嬉しいが、それによって吸われる対象にされるのは嫌だ。そんな思いに駆られ、シオリは体をガタガタと震わせた。
「ユウイチ君、私の妹を必要以上に怖がらせないでくれない?でも大丈夫っぽいわよ。街の人の話だと、伯爵は人の血は吸わないし女性には興味がないって話だし」
「へぇ〜、じゃあ何の血を吸って生きてんだ?」
「それは…。ジュン君、ここに来るまでモンスターの奇妙な変死体が沢山転がっていたわよね…?」
「ああ。何だか首を鋭利な刃物で寸断されてて、辺りに血が一滴も流れてなかったな…。って、まさか!?」
「ええ…。私も実際に見るまで信じられなかったけど、街の人の話だとその死体が伯爵に血を吸われたモンスターの死骸だとか……」
カオリの話を聞いて他の4人は血の気を失った。自分達の血を吸われる心配はないものの、オーベルシュタインがモンスターを一撃で殺すような腕の立つ吸血鬼だと理解し、新たな恐怖感が涌き出ていた。
「ギギィ…」
「キャ!」
周りに恐怖感が渦巻いていた中、今まで閉まり切っていた城のドアが開き、それに驚いたシオリは、思わずユウイチに抱き付いた。
「ははっ、シオリはホント怖がりだな」
「あっ、ご…ごめんなさいユウイチさん……」
思わずユウイチに抱き付いてしまったシオリは、恐怖感を忘れる程の恥ずかしさを感じていた。
「さ、とっとと中に入ろうぜ」
気を取り直し、一向はオーベルシュタインの居城へと入って行った。
|
「ようこそサユリ姫…。こんな夜分によくおいでになられた…」
「始めまして、伯爵。ローエングラム侯ラインハルトの妹、サユリでございます」
城の回廊を進んで行くと、薄暗く広々とした玉座の間に出た。その玉座に座っているオーベルシュタインに、サユリは自己紹介を兼ねた挨拶をした。
「…なんと言うかホントに吸血鬼って雰囲気ね…」
「…ああ…とてもじゃないがあの顔は生きてる人間の顔じゃないな…」
白髪に薄茶色の瞳を持ち、そして青白い顔のオーベルシュタインを目の前にして、サユリの後ろに控えているカオリとジュンは、オーベルシュタインに聞えないような小さな声で呟き合っていた。
「ところで、どうしてサユリが来るのをご存知だったのですか?」
あまりにも手際の良いオーベルシュタインのもてなしに、サユリがその理由を訊ねた。
「オーディンには何の楽しみもありませんからな…。外の出来事が気になって、色々と情報を集めているのですよ…」
周りが辛うじて聞き取れそうな低音で無感情な声で、オーベルシュタインは答えた。
「では、今回兄の身に降りかかった事件も、既に聞いておいででしょう。伯爵の援助を何卒よしなに」
「分かっております。ですが、ラインハルト陛下には私の援助など必要ではありますまい。つい先程入った情報では、ジークフリード=キルヒアイス殿がミュルスの港に着いたとの事でした。ローエングラム侯の実質の片腕と称される彼が着いたならば、自ずと事件は終息に向かうでしょうな…」
「ジーク様が!!」
キルヒアイスの名を聞いた瞬間、サユリの顔がぱあっと明るくなった。誰よりも兄から信頼を受け、智謀に長けて腕も立つ彼が来たならきっと解決する。そして何より宮殿に戻れば久し振りに彼に会える。キルヒアイスに会える事、それが何よりサユリにとって嬉しい事だった。
「恐らく今夜中に解決するでしょうな…。もっとも、オーディンに着いたばかりの身体で再びローエングラムの地にお戻りになるのは負担が大きいでしょう。そういうわけです…夜が明けるまでこの城で休息し、その後出立するのが宜しいでしょうな…」
「ええ。ではお言葉に甘えて」
「フェルナー、サユリ姫と連れの方々を寝室まで案内するように…」
「はっ。さ、サユリ姫、こちらでございます」
オーベルシュタインの側近らしき男に案内され、サユリ達は城の寝室へと向かった。
「右側の部屋がサユリ様のお部屋で、左側がお付きの方々のお部屋でございます」
「ありがとうございます。ところでつかぬ事をお聞きしますが、貴方もヴァンパイヤなのでしょうか?」
オーベルシュタインの命で寝室に案内した男に、サユリが訊ねた。
「いえ、私は人間です。オーベルシュタイン様の命で情報集めをしている者の一人です。オーベルシュタイン様は私の他にも何人かの人間を雇い、情報収集に励んでいるのですよ」
「そうでしたか」
一礼し立ち去るフェルナーに、サユリ達も礼を返した。その後一向は各々の与えられた寝室へと向かい、眠りに就いた。
|
「う〜ん…」
「どうしたのシオリ?怖くて眠れないの?」
「うん…」
寝室のベッドに就いたものの城の不気味な雰囲気に気圧され、シオリはなかなか眠りに就けないでいた。
「ははっ。ま、場所が場所だし仕方ないさ。寧ろそんなのお構いなしに図太く眠っているこいつの方がある意味凄いぜ…」
「グーグー。う〜ん…カオリィ、今度こそデートに行こうなぁ…むにゃむにゃ……」
「寝言まで言って…ホント図太いわね……」
怖がるシオリを尻目に、寝言を言いながら爆睡するジュンを、ユウイチとカオリは呆れた眼差しで見た。
「コンコン…」
「誰?」
突然寝室のドアを叩く音がしたので、カオリはドアを開けにベットから這い出た。
「サユリ様!?」
ドアの先には、暗闇の中、ローソクを手に掲げながら身震いしているサユリの姿があった。
「あの…宜しければこちらでご一緒させてもらえないでしょうか…?」
「ひょっとしてサユリ様も怖いの?」
「はぇ…」
シオリに図星を突かれ、サユリは身震いしながらも顔を赤くした。
「ははっ。サユリ様、俺達より年上だし、そりゃ恥ずかしくなるわな。仕方ない、ジュンはこの通りだし、俺が代わりに隣の部屋に行きますよ」
「ありがとうございます、ユウイチさん」
そうしてユウイチはサユリと入れ替わりに部屋から出て、隣の寝室へと向かった。
「トントン…」
「誰ですか…?」
再びドアの叩く音がし、今度はシオリが開けに行った。
「あの…どなた…キャー!!」
開いたドアの先の暗闇の中に浮かぶ蝋燭の火に照らされた青白い顔に、シオリは思わず悲鳴を上げた。
「わっ、何だ何だ!」
その大きな悲鳴に、流石のジュンも驚いて起き出した。
「これは失礼…。驚かせてしまいましたな…」
「あっ、伯爵様。ご、ごめんなさい悲鳴など上げてしまいまして…」
目の前にあった顔がオーベルシュタインの顔だと気付き、シオリは失礼な事をしたと思い、オーベルシュタインに謝罪した。
「いえ、別に気にしておりませんので…」
「そうですか…。ところで何かあったのでしょうか?」
気を取り直し、シオリはオーベルシュタインに訊ねた。
「いえ…、いくつか言い忘れた事がありましたので、それをお伝えに来たのです…」
「言い忘れた事?」
「この城はヴァンパイヤの城故に至る所に危険な場所があります。なるべく寝室からお出にならぬよう気を付けるよう…」
「それは絶対に大丈夫だと思います!」
寝室で眠っているだけでも怖いのだから、興味本位で城の中など歩くわけがないと、シオリは心に念を押した。
「それとこの寝室には聖王時代の良い壺が多数ありますので、くれぐれも破損為さらないよう…。破損時の命の保障は致しかねませんので…」
「はっ?壺…ですか…?」
余りにも意外なオーベルシュタインの一言に、シオリは目をきょとんとさせた。
「街の人達の噂はホントのようね…」
「噂?」
「ええ…。何でも伯爵は熱狂的な壺収集家だとか……」
「ヴァンパイヤが壺収集ね…。しかし命の保障はないって…まさか壺を壊すと城の外のモンスターと同じ目に遭うとか……」
カオリの口から出たオーベルシュタインの意外な一面に驚きつつ、触らぬ神に祟りなしとジュンはベットに深々と潜り込んだ。
「それと一つ気掛かりな事が一つ…。失礼ですが貴方のお名前は?」
「えっ、私ですか?私はシオリと申しますが…」
「そうですか、シオリ様と申されるのですか…」
「私の名に何か…?」
自分の名を訊ねるオーベルシュタインに、シオリは問い返した。
「いえ…貴方の姿に何やら不思議な感じを抱きましたので…」
「私にですか…?」
「ええ…。魔王のようで魔王でない、聖王のようで聖王でない…。貴方はそんな不思議な感じがします……」
「?」
「まあ、私の思い込みかも知れませんので、あまりお気に為さらずに…。ではごゆっくりお休み下さい…」
ゆらりと姿を消すオーベルシュタインを見送り、シオリはベッドに潜り込んだ。結局の所、シオリにはオーベルシュタインの言っている意味が理解出来なかった。魔王のようで魔王でない、聖王のようで聖王でない…。一体どういう意味なのだろうかと……。
…To Be Continued |
※後書き
オーベルシュタインの居城に寝泊りしましたとさ(苦笑)。
う〜ん、当初の予定ではこの回でオープニングイベントの分を終わらせようと思っていたのですが、思ったより長くなり、次回へ持ち越しとなりました。
さて、ようやく姿を現したオーベルシュタインですが、いくつか声優ネタが入っております(笑)。一つは壺コレクターというネタ。これは「機動戦士ガンダム」のマ=クベです。あとモンスターの首が鋭利な刃物みたいなので寸断されてたというネタ。これは「北斗の拳」のレイです。つまり、誤って壺を破損すると、「てめぇらの血は、何色だぁ〜!!」と南斗水鳥拳で瞬殺される訳です(爆)。原作知らない人に言っておきますが、原作のオーベルシュタインはこんなギャグ入ってるキャラではありませんので、あしからず。
それとクレメンス=ヒルダの父という配役。実は推敲中に急遽思い付いたネタだったりします…(苦笑)。当初は原作のまま行こうと思っていたのですが、極力原作のキャラ名は出さない方針で行きたいと思い、誰か適任のキャラクターはいないかと悩んだ末の配役です。本当はフレデリカさんの父にしたかったのですが、フレデリカさんをヤンの副官的役で出す予定ですので妥協の結果でした。原作生き残っている人間が既に死んでいる人間の役ですので、ベターとすら言えない配役だと自覚しております。まあ、これからもこういったベターと言えない配役は所々出て来る可能性はありますが、その辺りはご了承下さいませ。 |
SaGa−5へ
戻る